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伝説のディーラーを翻弄する女性 ~藤巻健史『外資の常識』~

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会社で貸していた本(藤巻健史『外資の常識』日経ビジネス人文庫)が戻ってきたのでそのレビュー。

めちゃおもしろいです。
藤巻氏の部下のウスイさんが。
JPモルガンで、中央銀行の検査官からフジマキさんはなんで単純な取引しかやらないんでしょうと問われて、「頭悪くて、複雑なのは理解できないんだと思います」って言うあたり最高です。
シンパシーを感じます。
で、信じられないくらい生意気なことを言いながら、藤巻氏の信頼をちゃんと勝ち取っているところがすごい。
しかし冷静に考えれば彼女、部下は部下でもエリート金融機関で自己ポジションをもつトレーダー、しかも帰国子女。
性格が似ていても、同じトレーダー職でも私との社会的地位の差は天と地ほどあります・・・。

本題の藤巻氏の相場観を知るという観点では、「第一部 プロパガンダ」よりも「第三部 フジマキ流マーケットの見方」でいくつか気になったフレーズがありました。
そのうちの一節です。  

~1985年、私は三井信託銀行からモルガン銀行へ転職した。(中略)  転職したばかりの私は、恐怖でいっぱいであった。儲けられなかったらどうしよう、というわけである。人材の流動化が進んだ現在と異なり、当時、国内の金融機関で転職という概念はほとんどなかった。(中略)  そんな恐怖が先に立って、私はモルガン入社後の2年間、まったく金を使わなかった。将来なにがあっても大丈夫なように給与のほとんどを貯金した。いっさいの無駄遣いをしなかった。  この経験から、私が身に染みてわかったことがある。すなわち、「雇用の不安があると、人はまったく消費に金を回さない」ということである。~(375ページ)

雇用に不安がある、もしくは賃金の上昇見込みがないことによる消費の低迷は、いままさに日本経済で起こっていることです。
90年代前半にも同じことが起き、個人消費は回復しないと見切った藤巻氏は債券売りのポジションを取り大成功をおさめたそうです。
ほかにも、日本は担保絶対主義なので、地価の下落が続けば信用供給はどんどん縮小する、ということなど。
そんな感じで、藤巻氏がインフレ政策を推奨する理由がいろいろと書かれています。

ところで藤巻氏が転職したときのもくろみの一つに、「海外勤務がない」ということがあったらしいです。
日系金融は日本が本拠地なので、日本国内はもちろん世界中に転勤の可能性がある。
そのいっぽうで外資系金融にとって日本人は多くの場合「現地スタッフ」という位置づけ。
支店も東京にしかないので基本的に転勤はない。
海外への転勤が嫌だから外資系に行くって、なんだかとっても逆説的だよね。

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