ふたりblog think twice!

考え事と備忘録と発見の集積。

家に育てられて脱落した子、社会に育てられて成功した子 ~林真理子『下流の宴』~

日経ビジネスオンラインで取り上げられていたときから気になっていた本です。
毎日新聞の連載小説だったのですね。

話はおもしろかったんですが、読みながら自分のことをいろいろ思い出して、実際のところなかなか前に進めませんでした。
登場人物はどこにでもいそうだけど個性的で、自分の周囲の人にも少しずつ似ていて、話のいろんな糸口からさまざまな思い出がよみがえってきたりするのです。
中流家庭というプライドから絶対息子を脱落させたくない母・由美子、見栄っ張りで玉の輿を狙う長女・可奈、勉強に目標を見出せず高校中退する長男・翔、翔がオンラインゲームで出会った恋人・珠緒。

由美子は私の母に少し似ていて、母は家の格を強調したりしなかったし(そんなものなかったので)、ティーカップにこだわったりもしなかったけど、教育にはかなり熱心だったし、近所の恵まれない家の内情を子どもの私に話して聞かせたりすることがありました。
翔は私の上の弟に少し似ていて、いきなり結婚するなどという話はなかったけれど(むしろあってほしかったような・・・)、中高一貫教育校で実質的にドロップアウトし、一時は引きこもりのようになって母をやきもきさせたものでした。

私の母は、父(私の祖父)の病気で大学進学を断念し、失意のうちに全寮制の看護学校に入学。
第一子の私を産んだのは22歳のときでしたが、子どもは全員大学まで行ってもいいようにかなり早くから意識していたように思います。
家計は楽じゃないはずなのに、私立中学に行きたいという私の希望を意外とあっさりOKし、そればかりか受験のための塾も母が探してきて、あれよあれよと二人の弟まで中高一貫校に通わせることになってしまいました。
しかし、子どもたちの学校の成績は母の理想とはかけ離れていました。
三社面談で「このままでは大学進学は難しい」と言われた母の怒りは激しく、物を投げつけられたりするのは日常茶飯事でした。
まあ、時はめぐって大学進学は難しいと言われた長女(私)と次男は大学院まで進学してしまい、なんとか3人とも定収が得られているのだから、この社会環境を考えれば御の字だと思うのですが、果たして母の理想像とはどんなものだったのだろうかと、いまでもたまに考えます。

私は田舎育ちで小学校はもちろん公立だったので、大学進学などはじめから人生設計に入っていない子どもも周囲にたくさんいました。
珠緒はそんな子たち、つまり学校の成績は悪くないのになぜか大学進学しない(と私には思えた)環境で育った子どもたちの姿と重なります。

小説では、家に育てられて脱落した翔と、社会に育てられて成功した珠緒という、恋人同士なのに対照的な二人が鮮やかに描かれていて、すっかり引き込まれてしまいました。
珠緒が由美子の鼻を明かすという意味では(相手の価値観に合わせすぎなので)もうちょっとひねりがほしいような気がするけれど、そこは22歳の女の子の素直な発想とも受け取れます。
由美子は自分勝手に思えるけど、子どもに投資した見返りを理想の充足という形で受け取りたいという気持ちはわからなくもないです。
(だいたい日本人で、価値観は古いくせにこんなにはっきり自分の思い込みと要求内容を語る人はさすがに少数派な気がします。)

となると、いちばん感情移入しづらいのはやっぱり翔ということになりますね。
私ももはや若者なのかどうかあやしい年齢になってきましたが、おそらく作者もこの青年の心情描写は手探りだったんじゃないかと思えます。
一方で、無気力な若者とか言うけどこんな人はじつは昔からいたのではないかという気もします。
月収15万でもやっていけるからいいというメンタリティは、正直私には理解できません。
15万しかもらえないから、その範囲でつつましく生活する中にも喜びを見つけるというのなら理解できます。
でも結果が15万なのと希望が15万なのはまったく意味がちがう・・・。
その金額では失業にも老後にも備えられないのだから。

私と弟たちも、多少の個人差はあったにせよ同じ親に同じ環境で育てられて、上の弟だけ特別に母を悩ませたというのは、家の教育でできることなど限られているという意味なのかもしれません。


生命保険営業の自己基盤

先日、見知らぬ電話番号から電話がかかってきました。
何日か前にも不在着信があった同じ番号。
出てみると、大学院でTAをしていたときの元ゼミ生でした。

かろうじて顔は思い出せるけど、連絡するような間柄ではありません。
(第一、電話帳に登録されてなかったし。)
元気ですか?覚えてますか?とはじめる相手に当惑しながら話を聞くと、なんと「いま会社の研修で、身近な人に生命保険の大切さを説明している」と言うのです。
だから一度会ってもらえないか、と。

は?生命保険の大切さ?

まず思ったのは、保険の営業なら営業だとはっきり言えばいいのにということ。
だからといって話を聞くわけではないけど、「営業などではない」とか言ってるし、いまどきこんな涙が出るほど古典的なアプローチで顧客が釣れるのでしょうか?
「私の顔に免じて契約してもらえないか」とでも言ってくれたほうがよほど納得感があります。
あ、どっちにしろ古典的ですね。
当然、お断りして電話を切りました。

で、次に思ったのが、こんな営業をほんとに会社が強要してるのだろうかということ。
生命保険の大切さ(なんて押しつけがましい!)を聞きたい人なんてほんとにいるのでしょうか。
ひょっとしてこの人、会社辞めたほうがいいんじゃないかと思いつつ、ネットで調べると・・・営業担当の活動内容が出てきました。


生命保険営業の役割

長年お取引きいただいた企業・官公庁のお客さまや新たに開拓していただく企業のお客さま、自身のネットワークを活用した個人や法人のお客さま等を担当していただきます。

自己基盤
友人・知人・前職同僚・取引先等の個人の方や営業活動が可能な企業を、自己基盤と言います。
研修で学んだ大切な事(生命保険の重要性)を 、まず自分の大切な方にお伝えします。

開拓基盤
訪問し、営業活動の許可をいただいた企業の事を
開拓基盤と言います。
従業員様や代表者様に情報提供しコンサルティングを行います。

特定基盤
一定の営業力が備わった方に会社からお任せする大企業・官公庁のことです。
オフィスでお会いできない職場の方には、電話で契約内容等のご説明を行うことがあります。


じ、自己基盤?!
こんなすごい用語はじめて知りました。
「友人・知人・前職同僚・取引先等の個人の方や営業活動が可能な企業を、自己基盤と言います。」ってどんな日本語やねん。
一昔前ならともかく、いまだに生命保険って義理人情の世界なんですね。
金融商品取引法って生命保険にも適用されたんだっけ?
でもふつうに考えて、昔みたいな飛び込み営業とかできなくなってるはずなので、親戚知人に頼るしかないってことなんでしょう。

もしかして、びっくりしてるのは私だけで、これって世間の常識?
私自身は生命保険はいらないと思っているので、生命保険の大切さのお話を拝聴すれば、感化されてつい契約しちゃうのかもしれません。

え?胡椒餅は? ~石田ゆうすけ『台湾自転車気儘旅 世界一屋台メシのうまい国へ』~

私は今年の2月に2度目の台湾に行きましたが、そのときに登録した「大好き!台湾 メルマガ」が今でも気まぐれに届きます。
その中に、新刊書の紹介コーナーがあり、気になる本を見つけました。

台湾自転車気儘旅 世界一屋台メシのうまい国へ/石田ゆうすけ
世界一周旅行をしたことがある著者が、友達にすすめらて台湾一周の自転車旅に!
台北から反時計回りに台湾を一周するのですが、途中、いろんなアクシデントもありながらの旅です。
台湾人の優しさを感じ、忘れることのできない旅です。地方のB級グルメなども多く掲載。

くしくも、先月乗ったJALの機内誌に枝元なほみさんの台湾グルメの記事があり、私の大好きな胡椒餅を彼女も大絶賛していて、その日から胡椒餅が食べたくてしかたがないのでした。
ただ、大好きと言いながら、私は胡椒餅を食べたことが2回しかありません。
それは4年以上前の1度目の台湾旅行、MRTの雙連駅の近くの屋台のような店で買ったものをホテルまでほおばりながら帰ったのですが、それはそれは衝撃的なおいしさで「これぞ、台湾グルメだ!」と勝手に大興奮。

餅というのは、中国では小麦粉を練って焼いたものを指すのですが、この胡椒餅の皮の部分が焼きたてあつあつでさっくり香ばしく、日本にあるどの食べ物にも似ていません。
餡は肉まんなどとはまったく異なるもので、小さい角切り肉(ミンチ?)にねぎなどの野菜が合わさって、黒胡椒のごくごくシンプルな味付けがなぜかあとを引くおいしさを生み出しているのです。
次の日が帰国で、また雙連駅までひとっ走りして、一緒にいた家族の分まで買い込み、空港バスを待ちつつ幸せの大口を開けていた私。
それが2回目。

そう、今年の台湾旅行では、なんと胡椒餅にありつくことができなかったのです。
宿泊したホテルが雙連駅から近くなかったので、どこか別の店で食べられれば、と安易に考えていたのですが、ガイドブックにも載っている龍山寺近くの福州元祖胡椒餅にたどり着いたときにはなんと品切れ。
別の日に弟が雙連駅まで行ってみてくれましたが、これも店じまいのあとだったようです。
その後、「胡椒餅」を看板に掲げている店にはついに一度も出くわしませんでした。
私はそのとき「TWG」というシンガポールの紅茶を探すことにも躍起になっていて、胡椒餅関係が正直おろそかになっていました。
胡椒餅って、どこにでも売っているというわけではないんですね。
*いま調べたところ、雙連駅の近くの胡椒餅店は「正宗福州胡椒餅」だとこちらのページに案内がありました。

で、件の本『台湾自転車気儘旅 世界一屋台メシのうまい国へ』を早速買ってきました。
この本のどこかで、胡椒餅にまた出会えるのではないかという期待があったのだと思います。
結果から言うと、どこにも載っていませんでした。
筆者の台湾ナンバーワンは、黒猫なんとかという店の肉まんだったそうです。
不思議なことに、文章ではおいしそうなのに写真はちっともおいしそうではないです。
まあいずれにしても、台湾の屋台のレベルの高さには全面的に同意します。

どちらかというと、私には食べ物以外のことのほうが興味深くて、各地での現地人とのやりとりがなかなかよかったです。
台湾人はなぜ親日的か、というのは私も個人的に気になっていたテーマだっただけに、思い切りよく突っ込んだ質問をしていくさまに、「あ、私もそれ知りたかった!」と思うことしきりでした。
筆者の最初の訪問が今年の1月と、私が旅行した時期に近かったこと(ほんとに寒かった)や、中途半端な中国語コミュニケーション(十分楽しい)、自転車旅行への羨望(私にはムリ)があいまって、楽しく読破できました。

Amazonのブックレビューを読んで気になったので、石田ゆうすけさんの旅行本『行かずに死ねるか!―世界9万5000km自転車ひとり旅』『いちばん危険なトイレといちばんの星空―世界9万5000km自転車ひとり旅〈2〉』も買いました。




しつこいですが相続税について ~大前研一・柳井正『この国を出よ』~


大前研一さんと柳井正さんの共著、『この国を出よ』を読んでみました。
この本で大前さんが相続税に反対しているというのを何かで知って、どういうことが書かれているのか読んでみたかったからです。
この国を出よ』 目次

プロローグ もう黙っていられない ─柳井正

第1章 絶望的状況なのに能天気な日本人
「失われた20年」に国民の財産300兆円が失われた ─大前
「まだ大丈夫」という錯覚はどこから生まれるのか ─柳井
今の日本は「ミッドウェー後」とそっくり ─大前
急成長アジアでは「もう日本は敵じゃない」 ─柳井
"ジャパン・パッシング"が本格化している ─大前
"経済敗戦国ニッポン"は「世界の保養所」になる ─柳井
今や世界は「日本破綻」に備え始めている ─大前

第2章 誰がこの国をダメにしたのか?
発言がブレても許されるのは日本の政治家だけ ─柳井
民主党がマニフェストを実現できない理由 ─大前
役所から保護されなかった企業ほど成長する ─柳井
「理念なき連立」がバラ撒きの温床となる ─大前
国の政治にも「経営的視点」が必要だ ─柳井
過去の失敗に学ぼうとしない不思議の国 ─大前
「成功者に厳しい税制」が国力を削ぐ ─柳井
イギリスのキャメロン首相に学ぶべきこと ─大前

第3章 変化を嫌う若者だらけの国を「日本病」と呼ぶ
仕事への志も貪欲さも失った日本人の末路 ─柳井
なぜ日本人は成長する国や企業に学ばないのか -大前
「サラリーマン根性」の蔓延とともに日本経済も衰退した -柳井

第4章 「理想の仕事」探しより「自力で食える」人間になれ
「基本」を学ばない"丸腰"社員が多過ぎる -大前
世の中に「まったく新しいこと」などない -柳井
今、ドラッカーから何を学ぶべきか? -大前
フリースもヒートテックも「顧客の創造」だった --柳井
最も求められるのは「問題の本質を探る力」 --大前
世界が相手なら、チャンスは50倍に広がる --柳井
目標なき日本人の「ロールモデル」は海外にある -大前

第5章 21世紀のビジネスに「ホーム」も「アウェー」もない
グローバル化は最大のビジネスチャンスだ --柳井
世界に通用する「最大公約数」ビジネスモデル --大前
ユニクロも"追い込まれた末"に飛び出した --柳井
GEやサムスンは人材育成に1000億円かける --大前
「次世代リーダーは外国人」の可能性もある --柳井
「優秀な外国人社員」が競争相手になる時代 ─大前
ビジネスマンの「民族大移動」が始まった --柳井
未熟な英語がグローバル化を阻んでいる --大前
進出した地域で貢献してこそグローバル企業 --柳井

第6章 日本再生のための"経営改革案"を提示する
所得税・法人税ゼロで海外からの投資を呼び込め ─大前
「費用対効果」も考えない政府は、もっと小さく! --柳井
「政治家育成」「一院制」「官僚リストラ」の三大改革 --大前
「何も決められない」政治家が官僚をダメにする --柳井
教育の世界にも「三つのC」の考え方を導入せよ --大前

エピローグ 日本を出よ! そして日本へ戻れ --大前研一


税金に関する箇所は、第6章の大前さん部分に出てきました。
大前さんの立場は、消費税を引き上げ、所得税と法人税を全廃、さらに資産課税の新設です。
所得税と法人税を全廃すれば、世界中から富裕層や企業が集まってきて「あふれんばかりの雇用」をもたらすらしいです。
まあ、そのあたりは金持ちの立場からすれば自然な主張ですが、資産課税という発想には正直びっくりしました。
以下、該当箇所。

こうして国内でお金がどんどん回る仕組みを作りながら、眠っている「資産」には課税します。これが資産課税です。現在、日本には1400兆円という莫大な個人金融資産がある一方、給与収入は下がる傾向にあります。下落する一方の所得に税金をかけるより、潤沢な金融資産に課税したほうが効率的に決まっています。課税されるなら使おうという人も増え、市場にはさらに多くのお金が出回るようになります。
資産課税の税率は1%で十分です。これでも現状の所得税や相続税よりずっと効果的です。というのも、前述した個人金融資産と不動産資産を合わせれば、国民の資産は2500兆円に上り、税率を1%に設定しても25兆円の税収が見込めるからです。法人部門を加えれば、さらに10兆円ぐらい増えるでしょう。

大前さん自身がどうかは知りませんが、世の中の金持ちの大半は、稼いでいることに加え、余計なお金を使わないことで金持ちになった人たちです。
別の言い方をすれば、彼らの目的はお金を使うことではなくお金を貯める(殖やす)ことです。
お金持ちはお金にシビアだと言われるゆえんですが、そんなことはリアルお金持ちである大前さんや柳井さんのほうがよほどよくご存じだと思います。
そんな人たちが、投資損益にかかわらず資産の1%を「毎年」徴収されたら、それこそ海外逃避の騒ぎでしょう。
それ以前に、そんな税制を実施しようとしただけで高齢者から袋叩きに遭うでしょうから、政治家にとっては検討課題にすらならないでしょう。

また、消費税(付加価値税)は10%に引き上げることで50兆円の税収になると大前さんは試算していますが、現在の消費税による税収は9兆円あまりで、倍にしたところで18兆円です。

さらに、相続税については以下のように述べています。

一方、日本の相続税の最高税率は50%と突出して高いのですが、その割に、税収総額に占める割合は約1.6%に過ぎません。富裕層や事業継承が必要な企業の心理的な負担感のほうが非常に大きく、デメリットが上回っていると感じています。

そもそも、財務省のサイトにもあるように、相続税というのは資産課税に属するものです。
「課税されるなら使おうという人も増え」というのは相続税にも当てはまるし、資産課税を推進しようとしている立場でなぜ相続税に反対するのか、結局よくわかりません。
というか、大前さんのストーリーからすると、お金持ちが1%の資産課税を嫌って消費するとそこで10%課税されることになるんですけどね。

文中で所得税のない国としてモナコを挙げていますが、この国の一人あたりGDPが高いのは、単に移住してくる人の平均所得が非常に高いからです。
かりにモナコ(人口3万人=夕張市2つ分)に居住する億万長者と同数の億万長者を日本に誘致できたとしても、(ストーリーの設定上)税金も取れないうえ国内消費に与える影響はほとんどないでしょう。

本についての全体的な感想は、皮肉は達者だけど結局自分のことしか考えてないという意味においては、この二人もその他大勢の日本人(私もです)と変わらないということ。
もちろん、大前さんは世界的なコンサルタントで、柳井さんは世界的な経営者なので、観点は一般の人とはやや異なっています。
それでもやっぱり、日本のために何かしようというのではなくて、「いざとなったら自分は(日本から)逃げます」という立場を高らかに表明しているだけのように思えます(ま、タイトルのとおりですね)。
大前さんや柳井さんの個人としてのインセンティブを考えればそれは当然なのですが、本出してまでわざわざ言ってほしくなかったというのが正直なところです。




そういえば相続税について

前回のエントリー
で相続税を引き上げたらいいと書きましたが、その数日後に日経に次のような記事が上がりました。

相続税、非課税枠3000万円台に縮小 生前贈与は拡大 若い世代へ資産移転促進 政府税調

2010/11/12 2:06
日本経済新聞 電子版

政府税制調査会は相続税の非課税枠を縮小する方針を固めた。5000万円の定額部分を3000万円台に引き下げる案が有力だ。相続税を実質増税する一方、贈与税の課税繰り延べ措置の対象を孫まで広げる。若い世代への生前贈与で資産移転を促す狙いだ。また政府税調は11日の会合で、2012年から上場株式の配当や譲渡益にかかる税率(所得税と住民税の合計)を、本則の20%に戻すことを正式に提案した。

相続税の非課税枠は現在、5000万円の定額に相続人1人当たり1000万円を加算した額に設定している。直近の地価が下がっているのに対し、非課税枠が厚めに設定されたままであるため、相続税を負担する人の割合は、ピーク時の8%から4%程度に下がっている。政府税調はこれを5%以上に引き上げたい考えだ。

非課税枠は、地価が高騰したバブル期に負担軽減のため段階的に拡大したまま15年以上据え置いてきた。ピーク時に約3兆円あった税収は1兆円強で推移しており、納税者のすそ野を広げ増収につなげる。



一方、親子間の生前贈与を促す「相続時精算課税制度」で対象を孫にも広げる。同制度は2500万円まで贈与税がかからず、相続時まで課税を繰り延べる仕組み。ただ高齢化が進む現状では、相続時に親子がともに高齢者となっていることが多い。より若い世代への資産移転を促し、消費の活性化に結びつける。

証券税制を巡っては、10%に軽減している現行の「証券優遇税制」を11年末で廃止する方針だ。公社債や預貯金の利子など他の金融所得は税率が20%のため、一体的な課税を進め税収を確保する。

優遇税制の廃止で投資意欲を冷やさないように、配当などの利益から譲渡損を差し引いて課税所得を抑える「損益通算」の範囲を、上場株から公社債にも広げることを検討する。

相続人が一人だとして、最低適用額は3000万+1000万の4000万円ということかしら?
60歳時点で所持金4000万だったらあんまり安心できない気持ちもわかりますが、80歳くらいでそれくらいあるなら、徐々に若い世代への資産移転に取り掛かってもよさそうだなと(想像にすぎませんが)思います。
30~40代で子どものいる世帯なら、お金はいくらあっても足りないくらいでしょう。

しかし、これも年金が受け取れるかぎりの話で、私たちが高齢者になるころにはますます老後生活に身構えないといけないでしょうね。
私だったら、かりに老後4000万円以上持っていても資産移転はせずに死んでから税金で取ってもらうかも、と(感想にすぎませんが)思ってしまいました。

そんなことより、このニュース記事で衝撃的なのはどちらかというと証券優遇税制を2011年末で廃止する件ですね。
ほぼ永続的にやるものだとばかり思っていたので。
お金持ちとか投資会社はこれらの増税でますます海外に逃げて行くんでしょうね。
もう、投資先を海外にするだけでは不十分なのかもしれません。
これから身につけるべき能力は、世界中どこででもやっていく(収入を得ながら居住する)力なんだなぁと、最近つくづく思います。


G式

最近であった言葉

「自意識の当たり判定が大きい」

うわ、すげーナイスな言葉だ。新しい。
何事も自分事にするというのは大切なことだけど、
行き過ぎはよくないよね。
なんでもかんでも「え、なに俺のこと!?」
はうっとうしいので気w付けよう。

あとは話題のあれも詳細出たね。
iAdの広告クライアントの契約料金は1社につき年間1億円
http://t.co/RHXHaMD
プレミアム商品として販売するんだろうけど、
これを売り切るならさすが電通って感じ。
かなり制約激しいし、僕が広告主なら正直買いたくない。
不透明だ。注意してみとこう。


あとグーグルとfacebookで引き抜き合戦が盛んですが
こんなニュースも・・・。
Google、全社員の給料を1割アップ
http://t.co/tDLaZOC
300万ドルくらいの株を貰って
googleにとどまった社員もいるとかなんとか・・・。

メモ  AOLとヤフーが「フェースブック」を懸念すべき理由
http://t.co/uOaAKGY
日本はどうなるんだろう。


Javaでなんでこんなことできんのよ・・。
変態すぎる。
"JavaScript と HTML5 でゲームボーイエミュレーター開発"
http://twitthis.com/7b3fl3

ここにもインセンティブの奴隷 ~城繁幸『若者はなぜ3年で辞めるのか』~

城繁幸さんのブログをどういう経緯からかいつも読んでいるのですが、そういえば著書は一回も読んだことがなかったと思い、世間でも話題になった本を手にした次第です。

内容は、いかに既得権益者層が富を占拠しているかということがいろんな視点から描かれていて、読んでいてむかむかしてくるのですが、そこではたと気づいたことがありました。
それは以前読んだ『会社は頭から腐る』という本に書かれていた「インセンティブの奴隷」という用語で説明できるのですが、いまの日本社会は(というかどの社会でも)あらゆる人が利己を可能なかぎり追求して得られた結果なのだということです。
これは良いとか悪いとかではなく、経済学の基本もすべての経済主体が利己的に行動することを前提につくられています。
もちろん場合によっては利他的に行動することもあるでしょうが、そこに見返りへの期待が含まれているかぎり、そのような行動は利己的だといえます。

日本の富の大部分が高齢者に帰属していることはよく知られていますが、そのお金に明確な使い道があるわけではありません。
高齢者は(何歳まで生きてしまうかわからない)自分が死ぬまでに資金が枯渇しては困るから、お金を使わないのだと思われます。
単純に、お金がないとみじめだからというだけでなく、若いころにものすごいインフレを経験した世代でもあるので、余計にでも慎重になるのでしょう。
この、定期預金で死んでいるお金(そして、銀行はそのお金で国債を買う→国の負債が積み上がる)を流してやるには、高齢者にお金を使うインセンティブが生じることが必須となります。
その一つの方法は、相続税の引き上げだと思います。

年配者ほど多く富の配分を受けること自体は今にはじまったことではありませんが、この富の年齢傾斜配分を維持したまま人口ピラミッドの出っ張り部分が上シフトすることで、年配者一人当たりの富はなぜかあまり減らずに若年層一人当たりの富が激減することになります。
なぜ年配者の発言権がこれほどまで大きいかといえば数が多いからで、富の配分を決定する立場にある(政治家を含む)マネジメント層も年配者が圧倒的多数です。
このマネジメント層の人々が、なぜ同世代のノンワーキング・リッチの賃金を抑制しないのかは不思議ですが。
で、弱小勢力である若年層にしわ寄せが行くという図式です。
若年層を非正規化するよりも、ノンワーキング・リッチのおじさん数人を解雇したほうがよほど効率的な場合であってもです。

若年層の一人として、自分たちへの富の配分を求めるとすれば、単に「オレにもケーキをよこせ!」的戦法ではなく、若年層に富を配分させるような何らかのインセンティブを働かせる必要があるのでしょう。
そうしなくてはもうどうしようもない、というような。
インセンティブ理論を当てはめる場合、なにも世代を代表しなくても、自分ひとりに富が配分されればいいわけですが、ひとたび世代間格差を埋めることができれば、あとは惰性で富の配分を受け続けることができる可能性が高まります。
年配層で起こっていることをそのまま若年層に置き換えることができれば、今後の労力を最小化できるというわけです。
最初の人の苦労で得た権益を、それに続く膨大なフリーライダーたちがせしめていくという図式ですね。
利己とはそういうことだし、これはもう神にしか止められません。

世代間格差の問題については、『社会保障の「不都合な真実」』という本に詳しく書かれているようなので今度読んでみます。