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化石化する消費 ~三浦展『シンプル族の反乱』~

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三浦展『シンプル族の反乱 ~モノを買わない消費者の登場~』(KKベストセラーズ) の新聞広告を見て、その日のうちに買 った。
反乱というとおだやかでないが、社会で静かな広がりを見せる「非消費層」ともいうべき消費者に焦点を当てた一冊。
若年層に多く、車を買わない、無印やユニクロのヘビーユーザーという特徴があるらしい。

以上のような特徴は私自身にもあてはまるのだけど、著者のおこなった「私が考えるシンプル族の典型イメージに近い暮らしをしていると思われる人たち」へのインタビューによれば、
・できるだけ新品のものを買いたくない
・ものを捨てたくない
・古くて味のあるものになら多少高価でもお金を出す
・エアコン、洗濯機、掃除機などの電化製品に頼りたくない
・都内でも浅草、神楽坂、谷中などの古い歴史を感じる街に住みたい
というような嗜好性を著者のいうシンプル族は多かれ少なかれ持っているらしい。
そこまで徹底するのなら、むしろユニクロや無印はほんとうに気に入ったものが見つかるまでの間に合わせの役割しか果たしていないように思える。
このような人々はサンプルとしては偏りすぎているので、著者にはもうすこし平均的な消費者像にアプローチしてもらいたかった。

いっぽう思わず笑ってしまったのは、いまの消費者のメンタリティを的確に突いた次の一説。
 GMが倒産したということは非常に象徴的である。企業が、消費者の論理ではなく、企業の論理で物を作って浪費させる時代の「終わり」が始まったのである。

 だから、単に燃費の悪いガソリン車からプリウスやインサイトのようなエコカーに乗り換えればいいという問題ではない。たとえエコカーでも、4年に1回買い換えていたら、全然エコではない。今行なわれているエコ減税に対して少なからぬ消費者が(特にシンプル族が)欺瞞を感じるのは、それが所詮買い換え促進政策にしか見えないからだ。
まあ、実際買い換え促進政策なわけだけど。
こういうふうに感じる消費者が増え続けているとしたら、お金は流れなくなる一方だ。
したがって、シンプル族にいかに消費してもらうかが、各企業にとっての関心事ということになる。

ただ、ほんとにお金を使わないといけないのは、親の敵のように貯蓄しまくっている高齢者層なのではないだろうか。
相続税率をもっと引き上げて、存命中にお金を使うインセンティブになるようにすれば、ある世代の「老後資金」がそのまま次の世代の「老後資金」にスライドするような現状も少しは解消するかもしれない。
さらに根本的な問題は、高齢者がお金を貯めこまなくても普通に生活できるしくみを再構築する方法が見出せないことだ。

この問題を放っておいたまま、所得が不安定化している勤労者層に企業努力によって消費をうながすのは無理がある気がした。

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