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世の中は世襲制であふれている ~『タクシー王子、東京を往く』~

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『タクシー王子、東京を往く。』は、タクシー会社日本交通の三代目社長が1ヵ月弱タクシー常務を経験したときの体験記。
社長の川鍋一朗さんは、『カンブリア宮殿』にも出演した、いま注目の実業家(らしい)。
幼稚舎からの慶応育ちでMBAホルダーのエリートが、まるで水戸黄門のように身分を隠して乗務。
外国人の乗客にも英語を使わないという徹底ぶり。

この本を手に取った理由は2つ

1.タクシーの運転手さんは乗客に対して何を思っているのかちょっと知りたかった
2.あるべき世襲制とは何かを考えたかった


1に関してはまあまあ満足した。
臨場感あふれるタクシー裏情報という観点では、他の現役ばりばりの運転手に聞いたほうがおもしろそうだが、初心者としてのみずみずしい観点でその点はカバーしている。

2については、私の欲求は満たされなかった。
日本交通を川鍋さんが継がなければならない必然性は感じなかったからだ。

たぶん川鍋さんはとてもいい人なんだと思う。
しかし、文中に出てくる自作メールマガジン「イチロー通信」の文面はちょっときもい。
このノリで、全社員(大半は中年以上の男性と推察される)に向かって送信される。
想像しただけでさぶいぼが出てきそう。

いっぽうこの本の中でいちばんよかったのは、マッキンゼー時代の挫折を回想する1ページ。

『ビジネス版悪魔の辞典 増補改訂版』によれば

【同族経営】
業績不振だと同族のせいにされ、順調だと長期志向が評価される会社


世の中そんなものなのかもしれません。




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